「オーソモレキュラー医学の最新動向-2025春-」に当研究所所長 今野裕之先生が登壇しました。
開催概要
日時:2025年3月9日10:00~17:10
会場:品川フロントビル会議室
主催:一般社団法人 日本オーソモレキュラー医学会
【講演抄録】
Lecture2 11:30~12:30
今野 裕之
~最新のエビデンスに基づく認知症の予防戦略~
近年、認知症の発症や予防に関する進展が相次いでいます。2023年には、アルツハイマー病の治療薬「レカネマブ」が登場し、2024年には「ドナネマブ」が承認され、治療の選択肢が増えました。これらの薬はアミロイドβタンパク質の蓄積を抑制することにより、認知症の進行を遅らせる可能性があります。
予防面では、2024年に『LANCET』が認知症リスク因子として新たに視力の低下とLDLコレステロールの上昇を追加しました。これにより、中年期からの早期予防の重要性が強調されています。また、生活習慣や食生活の改善が予防と治療において有効であることが証明されつつあります。日本では、国立長寿医療研究センターのJ-MINT研究や神戸大学の研究で、運動や食事指導、認知機能訓練が効果を上げており、特にAPOEε4遺伝子保有者の認知機能維持が確認されています。
さらに、認知症対策の個別化が進んでおり、例えば米国発の「リコード法」では、軽度認知障害や早期認知症患者の認知機能改善が報告されています。日本でも、2023年に英国発の「FOOD FOR THE BRAIN」がローカライズされ、オンラインで認知機能検査を行い、認知症リスクを評価できる体制が整いつつあります。また、ウェアラブルデバイスや自宅でできる検査キットも充実し、認知症を専門としない医療機関でもより効果的な認知症予防が可能になりつつあります。